森の恵み

【視察&体験】森と健康ラボ:森林セラピー先進地の信濃町に行ってきました

2023年12月12日、森林セラピーの実践について、信濃町で森林メディカルトレーナーをされている高力さんをお招きして、キックオフ・ラボを開催しました。
>>キックオフ・ラボのレポートはこちらからご覧ください。

その後、森と健康ラボについて興味関心のあるメンバーが集まり、実際に信濃町で森林セラピー体験をさせていただくことに。
今回は、冬の森林セラピー体験と、信濃町での森林セラピー事業の取り組みについて学んだことをご紹介します。

講師:高力 一浩氏(信濃町森林メディカルトレーナー。信濃町認定「癒しの森の宿」ロッジしらかば オーナー)
講師:水野 ひろし氏(信濃町認定「癒しの森の宿」セシルクラブ オーナー)
講師:鹿島 岐子氏(信濃町森林メディカルトレーナー)

日時2024年3月18日(月)9:00~17:30
※夕食・交流会[希望者]:19:00~21:00
会場森林セラピー体験:癒しの森 地震滝(苗名滝)コース(長野県上水内郡信濃町)
会場・交流会:ログペンション セシルクラブ(長野県上水内郡信濃町野尻3884-766)

冬の森林セラピー体験


森林セラピーは、五感を使って森林の中で過ごすことで、森に癒されたり、普段使っていない感覚を取り戻したりして、ストレス軽減や病気の予防を目指す方法です。

今回信濃町を訪れた日は3月半ば。ちょうど雪が降った後で、スノーシュー体験にはぴったりの環境でした。


降ったばかりの雪の上は、スノーシューで踏みしめると少し沈みますが、ザクッザクッと軽快に歩くことができます。ちょっぴり沈みつつも、好きな場所を好きなだけ歩ける楽しさです。

雪の白色一色の山は、色が少ないので疲れにくく、丸みを帯びた景色に心がほどけます。また、他の季節と違って蜂や羽虫、熊もおらず、眺望も拓けていて、心理的安全性も担保できやすい環境かもしれません。


歩きながら、高力さんが植物を紹介してくれました。
ハーブティーとしても人気があるクロモジは、枝の割れ目からスパイスの良い香りがします。


ふかふかの雪の上を自由に歩き回れて、なんだかワクワク。
段差がある場所では、遊び心満点で滑り降りてみることも。


節目の模様がにこちゃんマークのように見える小枝は、サワグルミです。
目をつぶったかわいらしい顔も、言われてみないと気付かないもの。小さな発見が楽しめます。


途中でゆったりと深呼吸する時間も。雪が音を吸収してくれるので、周りは本当に静かです。脳科学的観点からも、色がない・角がない・雑音がない空間は癒しをもたらしてくれるのでは、と考えられていて、冬山はまさにセラピーにうってつけの場所だと言えます。


山菜があれば、なんと新芽も味わえます(写真はコシアブラの新芽を味わっているところ)。冬期の味覚はほろ苦い山菜の味です。色や音が少ない雪の中なので、味覚も研ぎ澄まされているような気がします。


また、それぞれ自分と向き合う時間を過ごすため、森の中でごろん。ふかふかの雪に背中を預けて、木々を眺めたり、空を見上げたり、ぼぉーっとしたり…木々のざわめき「1/fのゆらぎ」音を聞きながら、自然に溶け込みます。日々の喧騒を忘れて、あっという間に時間が過ぎていきました。


体が冷えてきたら、お手製のレモングラスのハーブティーでおやつタイム。ほんのり甘いドライしょうが・ふきをいただき、心も体もほっこり温まりました。

普段は意識していなかった自分の心と向き合う時間も取れて、全員適度な疲労感を味わえたようです。

体に優しいマクロビの「癒しの森」弁当


スノーシュー体験のあとは、信濃町内にある癒しの森の宿「セシルクラブ」さんに移動。
信濃町でペンションも経営されている「ナチュラルキッチンアルム」さんに依頼し、肉をなるべく使わない、体に優しいマクロビオティックのお弁当を頂きました。

◆マクロビオティックとは?
マクロビオティックとは、穀物や野菜、海藻などを中心とする日本の伝統食をベースとした食事を摂ることにより、自然と調和をとりながら、健康な暮らしを実現する考え方です。

CHAYA マクロビフーズHP

主に、玄米をはじめとした穀物が主菜となり、肉・卵・化学調味料などの消化に時間がかかるものなどは避けて調理されるのが特徴です。

また、マクロビオティックの概念には「身土不二(しんどふじ)」という考え方があり、地元のもの・旬のものをいただくため、地産地消ともつながるところがあります。

【今回のお弁当のメニュー 一例】
・雑穀と鞍掛豆のごはん(信濃町産米)
・車麩の照り焼き煮(お肉の代用)
・野沢菜のコロッケ(長野名物を使用)
・豆腐のみそ漬け(地元の食材を使用)
・干しワラビ 桜和え(季節の食材を使用)など…

頂いたお弁当には、信濃町や長野県内で採れた米・野菜がふんだんに使われていて、地元の恵みたっぷりのお弁当にメンバーも絶賛でした。

信濃町の森林メディカルトレーナー・癒しの森の宿のしくみ


午後は、森林メディカルトレーナーの高力さんと、癒しの森の宿「セシルクラブ」のオーナーの水野さんのお話をお聞きしました。

森林メディカルトレーナーについて

信濃町では、森林セラピーの考え方を取り入れた独自の資格「森林メディカルトレーナー」を2003年から導入。森林の癒しの力を体験してもらうため、森林浴がもたらす効果や森の中でのガイド方法、信濃町で取り入れている療法(植物療法、丹田式呼吸法、爪もみ療法…)などを学べます。

講座は年に1回。現在は、秋期と冬期に分かれて計7日間(全24コマ、各90分)の講座を受講することで、森林メディカルトレーナーの資格を取得できます。

その後、先輩方と一緒に町民向け講座の対応をしたり、企業研修や子供たち向けの体験講座を担当したり、アシスタントとして経験を積み、その経験に応じて独り立ちしていきます。

また、ガイド資格を取得した後は、受講者が中心となって活動してきた「ひとときの会」に所属するかどうかを選べます。ひとときの会では、植物・自然観察・食事・ウオーキング・総合。・歴史文化・インバウンドの7つのグループに分かれて、学びを深められるような交流が行われているそうです。

癒しの森の宿について

「森林セラピー体験をした後、宿に戻ってスマホやテレビばかり見ている」
「自然に触れず、夜更かししてしまう…」

それではせっかくのセラピー体験がもったいない。

そこで生まれたのが「癒しの森の宿」の制度です。信濃町では、森林セラピー体験を受ける際は宿泊することも必須としています。体験後、宿でゆっくりと過ごしてもらい、アロマテラピー体験ができたり、体に優しい食事が取れたり…と、宿でも癒しの体験が可能です。

そのために、宿のオーナーは森林メディカルトレーナーの全講座を受講しています。
また、宿で以下の条件を満たすことも定められています。

・香りの演出 (アロマを使った癒しの効果など)
・おもてなしとくつろぎの提供
・静かな宿
・入浴方法の指導
・音の演出 (自然の音を活かした感じで)
・ナイトプログラムの実施 (星空ウォッチング・ナイトハイクなど)
・食事の工夫

信州信濃町 癒しの森®HP

セシルクラブの水野さんも、癒しの森の宿のオーナーとして長年活躍されてきました。

プログラム参加者にとって、体験が終わっても気持ちよくセラピーの効果を持続していただけるよう、森林メディカルトレーナーと連携し、お客様の希望やどんなことを期待しているかなどの情報を事前に共有したり、ツアー代金と宿代を一緒に払えるようにしたり、お客様にストレスがかからないようなおもてなしを提供しています。

セシルクラブ」さんでは、特に下記の4つのおもてなしが特徴です。

①食:手間暇かけたこだわりの食事
地元の四季折々の旬の食材を使用し、郷土食を取り入れた和洋折衷のフルコースの夕食。朝食には焼きたての手作りパンがいただけます

②快:快適に過ごせる空間作り
オーナー夫婦がふたりで切り盛りする小さな宿。気兼ねは一切いりません。

③休:心も身体もしっかり休息
客室は全部で5室。ごゆっくり滞在いただけるよう客室にはバス・トイレ・洗面台を完備。

④癒:ひのき風呂でゆったり
貸切でご利用いただける24時間入浴OKのひのき風呂や、ジェットの水流が心地よいジャグジーバス

セシルクラブHP

水野さんご夫妻と看板犬のちゃおくんのあたたかいおもてなしに、毎年宿泊してくださるリピーター様も多いのだとか。
信濃町の森で癒されて、宿でも癒される。そうやって地域全体で心と体のケアができる体制が整っているのですね。

信濃町での森林メディカルトレーナーの歩み


実際に森林メディカルトレーナーの講座を受講して、ガイドとして活躍されている鹿島さんにお話を伺いました。

信濃町で森林メディカルトレーナーの養成講座を立ち上げた当初は、町民が地元の森で癒されることを前提としていたため、受講者は町民が対象でした。

高力さんをはじめとしたメンバーで講座の立ち上げを行い、各専門分野の先生方を全国から呼んで3期生まで対応。その後は3期生までの受講者の中から各々得意分野で講師を担い、4期生以降の講座を続けてこられたそうです。

1期生を募集した際、「登山ガイドや、すでに自然体験に関わる資格を持っている方が来るだろう」と予想していたそうですが、主婦の方もたくさん参加されたとのこと。

その中の一人が、現在ひとときの会の会長も務める鹿島さんでした。
森の中で子供たちを遊ばせたり、長い時間を過ごしたりする中で、森の癒しの力を感じていた鹿島さんは、森林メディカルトレーナーの講座内容に惹かれて受講。
資格を取得した後、自然に関するガイド経験の少ない自分だからこそできることを意識して対応されてきたのだと言います。

それは「素人だからこそ、お客様に限りなく近い存在であること」。
森林セラピー体験を受けるときに「こんなことがあったらいいな・いやだな」という感情をお客様目線で持っている、ということです。参加される方の気持ちに寄り添った鹿島さんの案内はとても人気があり、今では指名でお呼びがかかるほどなのだそうです。

多くのガイドを輩出し、何より多くの方を癒してきた森林メディカルトレーナーとひとときの会。鹿島さんや高力さん達がやってこられたことを教えていただきました。

・広報誌に毎回「ひとときの会」の情報を載せ、少しずつ町民に周知してもらう
・「森林」っぽさを出しすぎずに、アロマや料理など、楽しいことやハードルが高くないものをアピールしてみる
・病院や介護施設、デイサービス施設への出張講座や、保育園での講座を対応
・ガイド中には、信濃町ならではのおやつや特産品などを持っていき、心を開いてもらう時間づくりを心がける
・遠くから来てくれる方にとっては「ガイド=信濃町」の印象になる。自分の大切な友達を迎えるおかみの気持ちで丁寧におもてなし

一番大切なことは、自分が楽しむこと。「誰かのため」「役割だから」というだけではなく、自分が楽しめることが森林サービス産業を継続させることにつながります。

今後の講座づくりに大変有意義なお話をありがとうございました。

まとめ:峰の原高原の恵みを生かしたガイドのプログラムづくりを

お話を参考にしつつ、峰の原高原で2024年から活動していくガイド養成講座のプログラムについて検討しました。

森林メディカルトレーナーの講座では、森についての知識のほかに、アロマセラピーや植物療法、カウンセリング、ノルディックウオーキングなど、さまざまな分野の知識も学びます。

峰の原高原でより特色のある講座を提供するには、さらに学べる範囲を広めたり、年間の開催日数を増やしたり、「ここでしかできない・学べない」ことを明確にする必要がありそうです。
しかし、詰め込みすぎも受講者の負担になってしまいます。

ステップアップしながら、しっかりと知識と経験を積んでいけるような講座をメンバーで作っていきたいですね。


Forest field MINENOHARAでは、峰の原高原の森の可能性をさらに高めていくために、健康分野のプロジェクト開発に取り組んでいきます。森林セラピーやクアオルト健康ウオーキングなど、さまざまな考え方を取り入れながら、峰の原高原の特色を盛り込んだガイド養成講座を検討中です。

峰の原高原での健康プログラムに興味がある方は、プログラムづくりに参加してみませんか?ぜひお気軽にお問い合わせください!

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