森をつくる

【第3回】森づくりラボ:峰の原高原の森づくりの方向性を考える

峰の原高原で目指す森づくりの方向性を検討するため、2024年3月22日に「森づくりラボ」第3回目のキックオフ・ラボを開催しました。

今回のラボの目的は、2024年4月以降からスタートする森林活用の取り組みに対し、どのように森づくりを行っていくかの方向性と、プログラム内容を検討すること。

菅平高原にある、やまぼうし自然学校で森林教育を指導している加々美さんと、小諸市で自伐型林業を実践している天野さんに具体例などを教えていただきました。

講師:加々美 貴代氏((NPO)やまぼうし自然学校 代表理事)

講師:天野 紗智氏((一社)ディバースライン 代表) 

日時2024年3月13日(水)13:30~17:00
※夕食・交流会[希望者]:17:30~19:30
会場集合場所:Cafebar CHICHIPI(長野県須坂市仁礼3153−590)

過去のキックオフ・ラボについては、下記のレポートをご確認ください。
>>【第1回】「森づくりラボ」キック・オフ開催
>>【第2回】森づくりラボ:きたもっく・東急リゾーツ&ステイの先進事例を学ぶ

峰の原高原の歴史を振り返る

まずは、峰の原高原エリアの森林を管理している(一財)仁礼会(にれいかい)の若林理事から峰の原高原の歴史を伺いながら参加者と共に、峰の原高原が元々どのような植生を持っているのか、簡単に振り返りを行いました。

はじまりもともとは木々が少なく、採草地や薪炭林として活用されてきた。→馬草、絹を作る際の薪や炭の供給をしていた。
別荘地の開拓(1970年代~)採草地や薪炭林としての需要が減ってきたタイミングで、別荘地として開発されていくことに。
植林分譲地の防風林として、また、鳥のさえずりが聞こえないという声から植林が行われてきた。カラマツ、シラカンバ、ダケカンバ、杉などが植林される。
現在の課題植林された木々の高木化により、景色への悪影響や倒木の問題が発生。伐採や草地化などの手入れが必要

 

サンセットテラス横の整備計画

続いて、やまぼうし自然学校の加々美さんより、サンセットテラス横の整備計画の例を提案していただきました。

峰の原高原には、シラカンバ(白樺)・シナノキ(しなの木)がたくさん生えているという特徴があります。これらの樹木の恵みを、クラフトづくりや食の体験、森林セラピーなどで味わってもらうのが良いのではないか、とアドバイスをいただきました。

【シラカンバの恵み】

特徴樹皮が白く、高原や草原に多く自生する。森が開かれた際、最初に侵入する先駆樹種のひとつで、峰の原でも多く見かける。
食の体験木に穴を開け、ホースなどを刺してバケツにたらしておくと、樹液が採取できる。樹液は甘く、虫歯予防に効果があるといわれるキシリトールの原料にもなる。
クラフト樹皮は着火剤としても使用でき、カゴやオーナメント作りにも適している。峰の原高原の特色を伝えつつ、さまざまな体験ができるのではないか。

【シナノキの恵み】

特徴色鮮やかなリンデングリーンが美しい落葉高木。葉っぱがハートの形をしていて、かわいらしさも抜群。
香りの体験5〜7月に花が咲き、レモンやライムのような甘い香りを放つ。シナノキの香りが辺りいっぱいに漂うと、シナノキの季節が来たんだなと感じられるほど。
クラフト山形県鶴岡市では、しなの木の皮の繊維を糸にして織る「しな織」という伝統工芸品が有名。クラフト体験として取り入れることができれば、魅力の一つになるかもしれない。

この他にも、メープルシロップの原料となるカエデ(峰の原高原には瓜のような見た目をしている「ウリハダカエデ」も多い)や、山菜としても人気のある「コシアブラ」など、身近な樹木を取り入れることで、気軽に高原の植物と触れ合ってもらえる場になるのではないか、とご意見をいただきました。

ディバースラインの実践例を学ぶ



一般社団法人ディバースラインの天野さんからは、峰の原高原で森づくりを担う方の育成プログラムを作る際、どのような内容にすればよいのか、ご自身の経験をもとに実践例をお教えいただきました。

まずは、ディバースラインが実践している自伐型林業についておさらいしましょう。

【林業の形態について】

施行委託型林業山林の所有者が木々の伐採を自分では行わず、森林組合や林業を担う会社に依頼すること。多くの森林で行われている林業の形。
特徴:皆伐(木々をすべて伐採すること)を行うため、一度にたくさんの木材が生産できる。その分、木々を育てるまで時間がかかったり、土砂崩れなどが起きやすい山になったりする。
自伐型林業山林の所有者自身が伐採したり、地域の山守と協力して伐採したりすること。林業の自営業のようなイメージ。自分たちで木々を運び出す必要があるため、小型重機で作業道を整備するなどの対応も必要。
特徴:必要な分だけを間伐するため、木材は少しずつしか生産できない。
そのため兼業が前提となるが、大型重機などの導入が不要で参入しやすい。年齢や性別にかかわらず取り組めるため、山間部での仕事獲得につながりやすい。
参考:自伐型林業推進協会

自分たちが管理する森で、必要な分の木々だけを間伐していくのが自伐型林業です。一度にたくさんの木材を生み出すことができないため、自伐型林業を行いながら、他の仕事も行う方が多いそうです。

なかでも、鳥取県智頭町(ちづちょう)では、林業を行いながら他の仕事をする「マルチフォレスター(半林半X)」の働き方が注目を集めています。地域の林業従事者が指導を行い、自伐型林業の知識と技術を身につけながら、農業や飲食店などの複業先も支援してくれる仕組みで、チームで地域産業を支えています。

ディバースラインの取り組みの歩み

ディバースラインでは、おもに下記の流れで自伐型林業の取り組みを進めてきたそうです。

技術を身に付ける林業に関する知識や技術を身につけられる講座、研修に参加。チェーンソーや小型重機の扱い、作業道の作り方なども習得する。
山林を確保する手が行き届いていない山林や、山道を作る必要性がある山の持ち主に問い合わせをして、手入れをさせてもらえる環境を作る。
重機などを確保するリースや、補助金などで入手できる場合もあり。
モデル林を作る実際に自伐型林業を行ったり、作業道を作ったりすると、どのような良い変化が起きるのかを見てもらえる山林を作る。→小学校や自治体などの研修の場につながったことも。
自分たちの活動が認知される自伐型林業をやってみたい方(新規参入者)や、山の管理を任せたい方(山林の所有者)が増えてくるので、自治体と協力して活動していく。

また、自伐型林業をやってみたい方向けに、「MORIBITO CAMP(もりびとキャンプ)」を開催。
計9日間のプログラムに参加することで、チェーンソーや小型重機などの資格を取得でき、作業道の作り方、木々の伐採の仕方なども学べます

峰の原高原でのプログラム作りの先を行く事例で、非常に貴重なお話となりました。

峰の原高原での森づくりの養成講座を検討しました

今後、Forest field MINENOHARA(フォレストフィールド峰の原)では、森づくりに関わりたい方の養成講座づくりを進めていく予定です。そこで最後に、事務局の野澤さん・木俣さんから提案いただいた養成講座のプログラムについて話し合いを行いました。

養成講座では、チェーンソーや小型重機の扱いはもちろん、森林そのものについての知識や人工林の間伐についても学べるように検討しています。

現在は仁礼会が森林の管理を行っているため、頂いたご意見を取り入れながら進めていきたいと考えています。

・プログラム受講者が仁礼会のメンバーと一緒に活動できるような体制を整える
・仁礼会が持っているつながりを生かした森づくりを行う
(エンデューロ:オフロードバイク用の森の整備や、登山活動者に優しい森づくり)
・森づくりに限らず、ガイドや森林セラピー、アロマテラピーなども含めた総合的な講座を提供する

長野県内で自伐型林業を取り入れている場所はまだ多くないため、峰の原高原でのこれまでの持続可能な森づくりをしっかりと打ち出していけるような講座を目指しています。


Forest field MINENOHARAでは、一緒に森づくりをしたい方、講座を作りたい方、講座を受けたい方などを幅広く募集しています。持続可能な森づくりや、これから始まる森林産業サービスについて興味のある方は、ぜひお気軽にご連絡ください。

関連記事

TOP