森をつくる

【第4回】森づくりラボ:フォレンタ・十里木高原別荘地の事例を学ぶ

峰の原高原で目指す森づくりの方向性を検討するため、2024年3月26日に「森づくりラボ」第4回目のキックオフ・ラボを開催しました。

今回のラボの目的は、峰の原高原の森を活用するため、どのようなサービスを展開していけばよいのかを検討することです。

森林レンタルサービス事業という画期的な森林の活用を行っている田口さん、静岡県の別荘地で森林の整備や改革を行った坂上さんをお招きし、それぞれの事業について教えていただきました。

講師:田口 房国氏(㈱山共 代表取締役)
講師:坂上 洋一氏(㈱資産対策研究所 代表)

日時2024年3月26日(火)13:30~17:00※夕食・交流会[希望者]:18:00~20:00
会場集合場所:Cafebar CHICHIPI(長野県須坂市仁礼3153−590)
夕食・交流会:ペンションきら星(長野県須坂市仁礼峰の原高原3153-726)

これまでのキックオフ・ラボについては、下記のレポートをご確認ください。
>>【第1回】「森づくりラボ」キック・オフ開催
>>【第2回】森づくりラボ:きたもっく・東急リゾーツ&ステイの先進事例を学ぶ
>>【第3回】森づくりラボ:峰の原高原の森づくりの方向性を考える

「forenta~森林レンタルサービス」の取り組み事例を学ぶ


日本で初となる森林レンタルサービスを始めた、株式会社山共の田口さん。なぜレンタルサービスを始めようと思ったのか、そしてどのように経営をしていったのか、お聞きしました。

forenta(フォレンタ)とは


(引用:forenta HP

岐阜県加茂郡東白川村で林業を営む田口さんが始めた森林レンタルサービスが「forenta(フォレンタ)」です。

希望者がレンタル料を支払うことで、1区画300坪ほどの森林が借りられます。
年間契約のためチェックイン・アウトなどの手続きは不要で、契約者はいつでも好きな時に自分の森に足を運べます。

また、区画内であればたき火OK(直火はNG)、細い木の伐採もOK、自分だけの小屋を建てるのもOK、道具も置きっぱなしにしてOKなど、言葉通り「自分だけの森」をレンタルできることが特徴です。
※レンタルする森林の管理者によって、どこまで自由に借りられるかが定められています。

「forenta」の取り組み

田口さんが森林レンタルサービスを思いついたのは、コロナ禍で見たニュースがきっかけでした。

「キャンプ場が混雑して予約ができない。そのため、キャンプ好きな方が山を購入し始めた」

このニュースを知って『もしキャンプに飽きてしまったら、購入された山はどうなるんだろう?売ってくれたらいいけれど、管理しきれずに放置されてしまうのでは…』という危機感を抱いたそうです。

『飽きてしまったら返せる方が、のちの管理も簡単だし、需要があるのでは?』
そこで思いついたのが、森林を借りられるサービス。

試しに自社で管理していた森を区画分けし、月5,000円(年間66,000円)のレンタル料で募集してみたら、17区画に対し、なんと440組の希望者が集まったのだそうです!
そこから森林レンタルサービスの需要があることに気づき、事業化されました。

貸し出す森は、田口さんが管理している森の中で、次の間伐まで活用予定のないエリアを選びます。草刈りなどは一切せず、そのままの森をレンタル。貸主にはほぼ負担がありません。
そのままの森だからこそ、借主は自分で草刈りをしたり、足元の木々を切ったり、自分だけの森づくりを楽しめるそうです。

こまめな管理が不要でいつでも始められるため、フランチャイズも展開。
一般の森林所有者さんが自分たちで収益化をできるよう、希望者の方とフランチャイズ契約を結び、レンタル契約の手続きの手伝いや募集プラットフォームの提供、トラブルへの対応方法などを教えているそうです。

「個人所有の森に人を入れたくない」という考えは多いと思いますが、森林をシェアすることで新しい林業が生まれる。そして、木材だけではなく複数の収入源を得られる、という新しい取り組みでもありました。

事業を始める際の課題・心配ごとと対応方法

とても魅力的なサービスである森林レンタル。実現するうえで大変だったことや、うまくいかなかったこともあったのではないかと思います。
ラボの参加者から出た質問を元に、forentaではどのように課題に対処していったのかを見てみましょう。

【課題や心配ごとと対応方法】※一部抜粋

課題や心配ごとどのように対応されたのか、そこから得たこと
日本初のサービスで前例がなかった相場などがなかったため、手探りでスタート。
実際に始めてみると多くの希望者が手を挙げてくれた。
森が痛んだり変わったりしないか借主が自由に利用できるので最初は心配だったが、それぞれ個性のある森になっていった
自分では想像し得ないもの(丸太小屋、サウナ、木の作品など)が多く、良い面が多かった。
借主を選ぶ仕組みはどのようにしているのか森を大切に使ってくれそうな方を見極める
応募の際、書類にて森を借りたい理由を明記してもらう、実際に現地に来て森を見てもらうなど、お互いのミスマッチを防ぐようにした。フランチャイズでは、フォレンタの担当者も借主選考のサポートを行っている。
最初の整備が大変だったか駐車スペースや林道、トイレを整備するくらい。
普段の管理も見回りは1週間に1回ほどで、なるべく手がかからないようにしている。
森林活用に反対する持ち主に対する説明やはり自分の森に人を入れるのに抵抗がある方もいる。でも「座して死を持つよりも活用したほうがいい」。実際の事例を見てもらい、放置するよりも活用する方がよいことをご理解いただいている。

自分が所有している森を人に貸すことに、抵抗がある方も多いでしょう。
しかし、木々が育つまでただ放置しておくのではなく、森を借りたい人に使ってもらうことで、収益化が可能になります。また、自分だけでは思いつかない森の活用法:ブッシュクラフトや秘密基地づくりなどに気づかされ、利用者から学ぶことも多いのだそう。

峰の原高原の豊かな森資源を活用してもらうにはぴったりの方法かもしれません。

「静岡県裾野市十里木高原別荘地」の先進事例を学ぶ



静岡県裾野市にある十里木(じゅうりぎ)高原別荘地。長年、管理がうまくいかず、寂しい別荘地となっていたエリアを改革し、活気ある場所に生まれ変わらせた坂上さんに、その経緯と取り組みについてお聞きしました。

h3 「十里木高原別荘地」とは


(引用:十里木・南富士HP

十里木高原は、富士山の麓にある別荘地。坂上さんが別荘地の管理者になって以降、別荘のオーナーさんとの関係性づくり、別荘の敷地内の森林の整備、そしてキャンプ場・グランピング場の開設、温泉施設の掘削など、さまざまな改革をされてきました。

特に、グランピング施設は「苔の群生が広がる十里木高原の自然を満喫できる」と人気の施設です。

「十里木高原別荘地」の取り組み

知り合いから声がかかり、十里木高原別荘地の管理を行うことになった坂上さん。
過去の管理者が別荘のオーナーさんと折り合いが合わず、信頼関係はほぼなくなっていました。そこで、別荘地の理念づくり・社員の意識改革を行い、オーナーさんとの信頼関係を回復することから始めたそうです。

また、オーナーさんと関係性を築くため、ゴールデンウイークに「ふれあいフェスタ」というイベントを開催。新しい管理者になったことを認知してもらうために、坂上さん自身が楽器の演奏バンドを組み、フェスタで披露したり、花火をあげて盛り上げたり、「新しく来た管理人は親しみやすい」ということをアピールしました。

続いて行ったのが、別荘地内の景観の整備。高木化によって富士山が見えにくくなっている土地や、道路に木がはみ出しているエリアの伐採を行いました。補助金を活用したため住民の負担はゼロ。事前に手紙を出して、手入れに承諾してもらったといいます。

次に、管理費のみを払っている方や、別荘を手放したいオーナーがいると考え、別荘の買い取りを手紙で通知。50〜60軒から返信があり、引き取り・買い取りをして管理してきました。

また、観光地として盛り上げていくために「温泉」と「キャンプ場」が必要だと考え、十里木温泉を掘削。もともとあったキャンプ場をリブランディングし、現在は苔が美しいグランピング施設として人気の宿泊施設となっています。

事業を始める際の課題・心配ごとと対応方法

峰の原高原と同じ「別荘地」という条件で、どのように整備を行っていったのか。
それぞれの改革に対して、どのように対応されてきたのか教えていただきました。

【課題や心配ごとと対応方法】※一部抜粋

課題や心配ごとどのように対応されたのか、そこから得たこと
景観整備の資金はじめは補助金や助成金を活用した。
申請の際、活動組織が必要だったため、住民に声をかけて一緒に活動してくれるメンバーを集めた。
景観整備の反対意見反対意見はほとんどなし。
十里木高原の問題を解決するため、という理由に納得いただけた。まずは整備してみて、それを見て賛同してくださった方も。
キャンプ場の再生補助金を活用。富士山の溶岩が流れた跡に苔が生えていて、それを見学できるようグランピング施設を整備した。
別荘地のイメージづくり愛鷹(あしたか)つつじの原種の群落があり、別荘地のコンセプトを「愛鷹つつじの咲く別荘地」とした。
現在も種を植えて守り続けている。

森林の整備も、キャンプ場の改装も、最初に必要になるのは資金と人材。十里木高原では別荘のオーナーさんの協力や補助金制度の活用などを上手に取り入れて進められたようですね。

オーナーさんとの信頼関係づくりから、新たな観光資源づくりまで、周りに信頼してもらいながらしっかりと成果を出し続けてきた様子が伺えました。

先進事例から峰の原高原の森づくりを考える


これまで峰の原高原の森林整備を担ってきた仁礼会の若林さんからも、今後の森づくりのアイデアについて共有していただきました。

現在、峰の原高原の森林活用についていろいろな取り組みが始まっています。
オフロードバイクの競技:エンデューロのコースとして活用したり、企業と共に森づくりを行ったり、間伐材を近隣の市町村で利用してもらったり…。

これまで仁礼会の皆さんが活動してきたものが、いろいろな形でつながり始めている中、峰の原高原の森林サービス産業として何をするのがよいのか。Forest field MINENOHARA(フォレストフィールド峰の原)のメンバーがやってみたいこと、持続可能な活動にするためにみんなが協力できること。

今後、実際に活動をしながら、具体的な施策を提案していけたら良いなと感じました。


峰の原高原での森づくり、森林サービス産業の創出を一緒に進めてみませんか?

Forest field MINENOHARAでは、自然や森づくりに関心がある方、地域の森林のために活動をしてみたい方を募集中です。ぜひお気軽にご連絡ください。

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