森を活かす

【第3回】森と健康ラボ:信濃町の森林セラピーについて学ぶ

2023年12月12日、峰の原高原の森林の恵みを活用していくための団体「Forest field MINENOHARA(フォレストフィールド峰の原)」主催のキックオフ・ラボが開催されました。

◆Forest field MINENOHARAとは?
「峰の原高原」が有する豊かな森の恵みや空間を活かして「森林サービス産業」等を創出したり、「関係人口」を創出し、次世代に豊かな森林・景観を継承していくプロジェクトです。

3回にわたり、下記のテーマでキックオフ・ラボを開催しました。
【第1回】企業研修編:「森林と共に成長するチーム: 高原で体験するチームビルディング」
【第2回】健康ウオーキング編:「森の息吹と歩む: 峰の原高原で見つける健康経営の一歩」
【第3回】森林セラピー編:「緑の癒しで心を整える: 森林セラピーによる健康経営の実践」

今回は、【第3回】森林セラピー編の様子をお伝えします。

ラボの概要~森林セラピー~

森林浴から得られるリラックス効果を生かし、健康維持を促進する森林セラピー。先進地である信濃町から講師の高力さんを招き、森林セラピー体験や信濃町でのガイド養成・町民向けの講座の実践について教えていただきました。

講師:高力 一浩 氏(信濃町森林メディカルトレーナー。信濃町認定「癒しの森の宿」ロッジしらかば オーナー)

長野県薬草指導員、全国体験活動指導者主任講師等。
森林セラピー先進地・長野県信濃町の事業を住民の立場で提案し、プログラム開発から人材育成に中心的に携わり、森林セラピーの礎を築いた。指導者養成や講演等で日本全国や韓国で広く活躍。

日時2023年12月12日(火)13:30~17:30
※夕食・交流会[希望者]:18:30~20:30
会場Cafebar CHICHIPI (長野県須坂市峰の原高原3153-590)

森林セラピーとは?

森林の中で過ごしたり、緑を目にしたり、川のせせらぎを聞いたり…。
森の中にいると、気持ちが落ち着いて癒された経験はありませんか?

実はその「癒し」には根拠があり、それらを活用してストレス軽減や健康維持を目指すのが、森林セラピーです。

森林セラピーは、科学的な証拠に裏付けされた森林浴のことです。
森を楽しみながらこころと身体の健康維持・増進、病気の予防を行うことを目指します

特定非営利活動法人森林セラピーソサエティHP

森林の中には、樹木などから放出される「フィトンチッド」という物質が存在しており、その香りはリラックス効果や免疫機能の改善などに役立ちます。

がんのもとになると言われている「NK細胞(ナチュラルキラー細胞)」や、高い数値であるほどストレスを感じていることを表す「コルチゾール」などの数値の変化について、さまざまな実証実験が行われ、森林の中を歩くこと、そして五感で緑を感じることで、それらの数値が下がることが証明されています。

また、自然界にしかない「1/fのゆらぎ」(葉がざわめく様子、たき火がゆらめく様子、水のせせらぎなど)は、人工物に囲まれている現代社会において癒しを与えることがわかっており、森林の中で過ごすだけで、生活習慣病の予防に役立ったり、日々のストレスを減らしたりすることができるのです。

森林セラピーを体験!

簡単な説明の後、峰の原の森をさっそく歩いてみることに。
残念ながら天気は雨。しかし、ご安心あれ。森林セラピーは雨が降っていても体験できるのです。雨が降る「しとしと…」という音に耳を傾けながら、森林セラピーがスタート。

今回は、峰の原高原から北アルプスを眺められる展望台「サンセットテラス」から続く遊歩道を歩きます。

森の中を歩き始めると、さまざまな植物が目に入ります。
森林セラピーでは五感を使うことが大切で、植物に触れたり、香りをかいだり、ルーペで観察したり、音を聴いたり…普段は意識していなかった視点から自然と向き合います。

この遊歩道には「ベニバナイチヤクソウ」という高山植物の群生地があり、これだけ多くのベニバナイチヤクソウが自生している場所はなかなかないのだとか。開花のシーズンは5月。あたり一面に広がるベニバナイチヤクソウが楽しみです。

続いては「ウメノキゴケ」。コケの一種で、空気がきれいな場所に生息しています。ウメノキゴケを見つけたら深呼吸して美味しい空気を味わいましょう。雨の日には、コケは生き生きとした表情を見せるので、ルーペで観察するとよく見えますよ。


イノシシが堀ったと思われる穴の跡や、鹿が角をこすった木の跡などもあります。
自分一人では「なんだろう?」と思うものも、ガイドと一緒に歩けば学びに変わります。


峰の原高原の特色でもあるカエデの一種「ウリハダカエデ」。その名のとおり、瓜のような模様が特徴です。


最後は1/fのゆらぎ音をゆっくりと聴く時間。
しとしと降る雨の音、雨が傘にあたって跳ね返る音、笹の葉のさわさわと揺れる音、落ち葉を踏むときの音…。森の中でそれぞれ個人が過ごせる時間を持つことで、より癒しの効果が得られます。

寒い中の森歩きとなりましたが、自然に触れてほどよいウオーキングを行ったことで、スッキリとした気分で会場に戻ってきました。

信濃町の森林セラピー取り組み事例を学ぶ



2002年、信濃町では森を「癒しの森®」と名付け、森の癒しの力を広めるために活動を開始しました。森林セラピーやクナイプ療法(水や植物を利用した療法の一種)の考え方を取り入れ、信濃町独自の講座を制作。「森林メディカルトレーナー」として、2003年からトレーナーの養成講座をスタートしました。

信濃町では、森林で過ごすだけがセラピーではなく、宿に滞在し、よい食事・よい睡眠をとることが大切だと考えています。そのため、ペンションオーナーにも講座を受講してもらい、「癒しの森の宿」として、ペンション・宿では下記の環境を整えてきました。

・香りの演出(例:オーガニックのエッセンシャルオイルの活用、睡眠時のサービス)
・静かな空間(例:宴会客や子供連れと重ならない工夫)
・より良い入浴の工夫(例:天然木の浴槽、入浴剤の工夫、入浴法のご案内)
・より良い睡眠のご案内
・食事の工夫

信州信濃町 癒しの森®HP

また、森林メディカルトレーナーが町民向けの講座を担当。町民は保険料のみで気軽に森歩きに参加できます。視覚障害や心の障害を持つ子どもたちとも森歩きを行い、最初は怖がったり、虫を嫌がったりしていた子どもたちが、あっという間に森の中を駆け回り、癒される姿を目の当たりにしてきたそうです。

森歩きに参加された方に協力してもらい、NK細胞や尿中アドレナリン、自律神経のバランスなどの検査を行ったところ、ストレス軽減や体に良い影響があったことが証明されています。

2018年からは、東京都練馬区の「練馬の森」でも森林浴の活動をスタート。うつ病を患っている方や引きこもりの方、発達障害児童、介護施設の職員など、さまざまな方に森の癒しの力を体験してもらう環境づくりを進めているそうです。

2022年時点で信濃町民のトレーナー認定者は約215名、県外の方は約50名にまで増え、ますます森林セラピーの活動が広まっています。

まとめ:峰の原高原の森の力を体感できる講座をつくろう



高力さんの森林セラピーの取り組みを聞いた後、それぞれのテーブルに分かれて峰の原高原での可能性ややってみたいアイデアを話し合いました。

学校教育として子どもたちや先生に体験してもらえるようにしたい
・病院の先生や看護師の方に体験してもらい、患者さんにも勧めてもらえる仕組みを作りたい
・天候に関わらず、森林セラピーが体験できるのがとても良い
森づくりや、ペンションの運営にも理論を取り入れたい
・どんな方に体験してもらいたいのか、アプローチをしていくのかわからない
・今すぐに始めるのは難しい、何からステップアップしていけばいいのか

など、プラスの意見はもちろん、実現の難しさを感じたという意見も。

森林セラピーガイドの養成から、実際に森歩きの講座を行うまでは、峰の原高原の方々や須坂市(自治体)の協力が必要不可欠。もちろん、ガイドを目指す人材やペンションへの認知も必要です。

自然の恵みにあふれた峰の原高原で、その魅力をより多くの方に知ってもらうためにはどうすればいいのか。どんな方に伝えれば、それが持続可能な活動になるのか。今後の課題が明確になりました。


Forest field MINENOHARAでは、峰の原高原の森の可能性をさらに高めていくために、健康分野のプロジェクト開発に取り組んでいきます。森林セラピーやクアオルト健康ウオーキングなど、さまざまな考え方を取り入れながら、峰の原高原の特色を盛り込んだガイド養成講座も検討中です。

「森の魅力を知りたい、見つけたい」
「子どもたちや患者の方への健康プログラムに取り組みたい」
「峰の原高原を楽しく散策したい」

など、峰の原高原での健康プログラムに興味がある方は、ぜひ一緒にプログラムに参加してみませんか?ぜひお気軽にお問い合わせください!

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