峰の原高原の森林の恵みを活用していくための団体「Forest Field MINENOHARA(フォレストフィールド峰の原)」では、健康・教育・森の恵み・森づくりの各プロジェクトに分かれ、活動しています。
今年度より、森づくりプロジェクトでは、峰の原高原で大事にされてきた「景観」「自然との共生」を考慮しつつも、森と人の関わりと地域の賑わいを生み出すために「森林空間の利用」「森の恵みの利用」を考慮した峰の原高原型「恵みの森づくり」を開始します。
そこで、10月5日に第1回目の整備活動を行いました。
森づくりプロジェクトでは、今後チェーンソーや小型特殊車両を使用して木々の間伐を行ったり、長期的な目線で森林の整備計画を立てたりできる人材「フォレスト・デザイナー」の育成を目指しています。
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11月23・24・30日の「フォレスト・デザイナー養成講座」に先立ち、峰の原高原型「恵みの森づくり」のイメージを多くの方と共有できるように、モデル林の整備活動をスタートしました。
【日時】2024年10月5日(土)、6日(日)
【場所】峰の原高原 サンセットテラス横の園地
【講師】
高橋 龍生氏(一般社団法人ディバースライン)
河西 恒氏(信濃町森林メディカルトレーナー)
古川 茂紀氏(須坂市観光協会 会長)
【目的】
●森林整備の仕方、間伐すべき樹種の選び方、どのような基準で散策路の制定を行うかを学ぶ
●森林整備すると、その前後でどのような変化があるのかをわかりやすく伝えられる場所を作る
会場「サンセットテラス横の園地」とは?
出典:Google map
今回、森林整備をする場所として選んだのは、サンセットテラス横の園地です。
この場所は何十年も前には「つつじ公園」があった場所。
しかし現在は使用されておらず、ここに広場があることすら、今の峰の原の住民の方にはあまり認知されていないようでした。
通常は2番通りと3番通りの間の駐車場として使用されることが多いのですが、そもそも上に登れるエリアがあることも知られていません。
駐車場の上に登ってみると、中央には人が集まれるサークルのようなスペースがあり、散策路の跡も残っています。
また、サークルからさらに上の方面に向かうと「サンセットテラス」の横に出ます。
毎年11月5日には、このサンセットテラスから槍ヶ岳と夕日がよく見えます。
夕日が沈んでいくと槍ヶ岳に刺さっているように見えることから、「槍に刺さる夕日」として写真家の間でも有名です。
しかし、サンセットテラスの横には、十分な遊歩道や駐車スペースがなく、ヘアピンカーブも近くにあるため、毎年危うい場面も見られます。
普段人の往来が少ないため、車はハイスピードで通ります
そこで、今回この園地を整備することとし、主に2つの目的を設定しました。
【目的①】下の駐車場に車を置き、園地を通ってサンセットテラスに出る流れを作る
【目的②】健康プロジェクトや教育プロジェクトでも利用できる場所として、車を置いてすぐのエリアに、峰の原の森を楽しんでもらえる場所を作る
森林整備の歴史
初めに、峰の原高原で長く森林整備に関わってこられた福永さん・古川さんから、今回のプロジェクトに対しての想いや、森林整備の歴史をお教えいただきました。
峰の原地区でMiNe(マイン:峰の原高原の自然や景観を守っていくための地域ネットワーク)として、山野草保護・遊歩道整備等の活動をされてきた福永さん。
「峰の原高原には、様々な散策路がありますが、そのどれもが地元住民の手によって整備されています。
このサンセットテラス横の園地も、今回手入れをしただけではすぐに木が生えてきてしまうので、長い目で活用し、整備し続けられる体制を整えることが大切になってきますね」
森林サービス産業推進協議会の会長でもある古川さん。
「森林サービス産業は、教育・健康・森の恵み等の各プロジェクトがありますが、その基盤にあるのは森。
フィールド整備をそれぞれのメンバーが行うことで、森の恵みをみんなが受容できるようになります。
そこで、これまで使われていた散策路だけではなく、今後教育・健康プロジェクトの入り口としても、気軽に森を楽しんでもらえて、峰の原高原の代表的な樹種に触れられる場所をつくりたい。今回の整備活動を皮切りに、各プロジェクトと連携しながら、今後の活動をイメージできるような、わくわくするものになったら嬉しいです」
園地内の把握
続いて、実際に現地の中を歩き、どのようなエリアがあるのかを確認。
講師の高橋さんから、なるべく傾斜のゆるやかな道を探すようアドバイスをもらい、「散策路を作るならどこがいいかな?」とイメージしながら歩きます。
傾斜を意識するのは、斜面が崩れたり、雨で土が流れないようにしたりするのとともに、子どもからシニアの方まで歩くときの負担をなるべく減らすためです。
笹やぶが広がっているので、道がない部分は前に進むのも一苦労です。
背を覆い隠すほどの高さに茂った笹やぶ
大きく3つのエリアに分けて、それぞれの方向性を確認しながら視察を行いました。
エリア1:遠景が見られるよう、皆伐(ある程度まとめて伐採)
エリア2:遠景が見られるよう、上層に位置する木を伐採。自然との共生や空間の利用も考え、皆伐はしない
エリア3:近景を重視し、空間や森の恵みを利用できる場所として施業方法を検討
⇒エリア1・2に関しては、遠景が楽しめるよう、ある程度伐採して管理することで総意。
エリア3については、具体的にどのような施業を行うかを話し合うことに。
エリア3の方向性を決める
エリア3には、元はつつじが中央に咲いていたサークル部分、駐車場からのアクセス、サンセットテラスへの遊歩道など、さまざまな要素が残っています。
そこで、サークルを生かしながら、下の駐車場からサンセットテラスまでの大きな散策路を敷くというアイデアにまとまりました。
講師の河西さんからは、森林セラピー体験を行う観点からもアドバイスいただきました
園地内には、峰の原高原の特徴でもあるシラカンバのほか、アカマツやミズナラが生えており、どの木を残し、どの木を切るか、さまざまな角度からのご意見をいただきました。
●峰の原高原特有の樹種を感じてもらう場所にするなら、シラカンバ林もよいかも?
●シラカンバの割合が多く、アカマツが少し目立つので伐採する
⇒アカマツは常緑樹のため切ると日差しがより入るようになり、明るくなる(切りすぎると日当たりが良くなりすぎて、他の木々ややぶが育ちすぎてしまう面も)
●子どもたちと森で過ごすことを考えると、アカマツの松ぼっくりで遊ぶこともあるので、残してもよいかも? など…
その中で、「まずは枯損木*や劣勢木*を伐採し、その後の日の当たり具合でどの木をどれくらい残すかを考える」という結論に落ち着きました。
*枯損木(こそんぼく)=枯れたり痛んだりしている木
*劣勢木(れっせいぼく)=樹勢が弱く成長が遅れているもの、枯れかけているもの
散策路の制定方法
午後は、実際にエリア3からサンセットテラスへの散策路を制定。
散策路の広さを決める際も、いろいろな要素の検討が必要です。
林道の整備を生業のひとつとしている高橋さんから、散策路を作る際に気を付けるポイントを教えていただきました。
●今後伐採後の木々を車で運ぶことを前提とするなら、道幅は2m以上(軽トラックが入れる広さ)
⇒軽トラが通ると車輪の跡「ダブルトラック」がつくので、自然味が若干減る
⇒だが、軽トラが通るだけで雑草が抑えられる利点もある
●小型車両での整備を想定するなら、2.5m以上
●車両が通れる広さにする場合、入口と出口をそれぞれ作る
今回は、今後の作業の利便性を考慮して、軽トラが余裕を持って通れる道幅2.3mほどを目指すことに。
駐車場から軽トラが通ることをイメージしながら、どこに道をつくるか決めていきます。
道の下側のラインにピンクのテープ、道を遮ってしまう木や枯損木には青のテープを巻きながら、より傾斜の少ないルートを設定。
カーブをつくるときは9mを確保
サンセットテラスまでの道のりを決めた後は、ルート沿い以外での枯損木・劣勢木を確認しました(冬になると葉が枯れ落ちて、どの木が劣勢木かの判断が難しくなるため、葉が落ちていない時期に行うのが効果的です)。
草刈り・伐採の様子
翌日10月6日には、足元に茂っていた笹やぶの草刈りからスタート。
午後はチェーンソーの使い方を高橋さんに教わりながら、伐採と玉切りの練習です。
最後に、伐採した枝や幹を活用し、バイオネスト作りも行いました。
「バイオネスト」とは、サークル状に幹や太い枝、中央部分に枝葉を置いた、生き物の住処のことです。
虫や小動物たちの住処となり、今後のプロジェクトでも観察ができるよう期待が高まります。
切った丸太を積み上げ、足元もすっきり
森林整備のビフォー&アフター
ほどよく日が入るようになった園地は、当初の鬱蒼とした雰囲気に比べて、かなり明るく見通せるようになりました。
森林整備活動のこれから
今回モデル林として整備した、サンセットテラス横の園地。
実際にその後、健康プロジェクトのモニターツアーでは園地内を通ってストレッチの時間を取り、ゆっくりと過ごしてもらうことができました。
笹やぶがなくなり、歩きやすくなった入口部分
日差しがしっかりと入り込み、明るい空間になりました
また、サークル部分は広く、足元も安定しているため、お子様も安心して過ごせます。
11月23~24日・30日に開催される「フォレスト・デザイナー養成講座」では、緋の滝遊歩道の近くでの整備を行う予定です。
ただ木々を切ればよいのではなく、長い目で見た時にどの木を残せばよいか、どのように散策路を制定すればよいか、森づくりの観点から整備ができる人材を育てます。
ぜひ、峰の原高原の自然環境を一緒に守りながら、森の恵みを活用していきませんか?
ご興味がある方は、ぜひお気軽にお申込み・お問い合わせください。