森を活かす

【第2回①】森と健康ラボ:ドイツのクアオルトウオーキングを体験!

2023年12月、峰の原高原の森林の恵みを活用していくための団体「Forest field MINENOHARA(フォレストフィールド峰の原)」主催のキックオフラボが開催されました。

◆Forest field MINENOHARAとは?

「峰の原高原」が有する豊かな森の恵みや空間を活かして「森林サービス産業」等を創出したり、「関係人口」を創出し、次世代に豊かな森林・景観を継承していくプロジェクトです。

3回にわたり、下記のテーマでキックオフラボを開催しました。
【第1回】企業研修編:「森林と共に成長するチーム: 高原で体験するチームビルディング」
【第2回】健康ウオーキング編:「森の息吹と歩む: 峰の原高原で見つける健康経営の一歩」
【第3回】森林セラピー編:「緑の癒しで心を整える: 森林セラピーによる健康経営の実践」

今回は、【第2回】健康ウオーキング編のラボの前半「クアオルト健康ウオーキング」をレポートします。
「②鹿教湯温泉の健康ウオーキングの活動例を学ぶ」はコチラ

ラボの概要~クアオルト健康ウオーキング~

自分の体力に合わせたスピードで、自然の要素を感じながらウオーキングをすることで、健康な体づくりを目指す「クアオルト健康ウオーキング(以下:クアオルト)」を実践している大城さんを招き、クアオルトの体験・他地域での取り組み例を教えていただきました。

講師:大城 孝幸 氏(日本クアオルト研究所 代表取締役/ドイツ気候療法士)

2度の心臓手術の後に、ドイツで公的な医療保険が適用され、心筋梗塞や狭心症のリハビリに使われている運動療法・気候性地形療法にめぐり合う。これまでに100を超える自治体を訪問して、クアオルト健康ウオーキングの啓発・普及に東奔西走。

日時2023年12月11日(月)13:30~17:30
※夕食・交流会[希望者]:18:30~20:30
会場集合場所:Cafebar CHICHIPI (長野県須坂市峰の原高原3153-590)
夕食・交流会:ペンション ハーフトーン (長野県須坂市仁礼峰の原3153-597)

クアオルト健康ウオーキングとは?


クアオルト健康ウオーキングは、ドイツ発祥の健康維持のための運動方法の一つです。ドイツ語で「クア=医療」「オルト=場所」を指し、「クアオルト=療養地・健康保養地」という意味を持ちます。

心筋梗塞や狭心症のリハビリ、高血圧の治療法として、地形や冷気・風などを活用した自然を歩くウオーキング(=気候性地形療法)が行われていて、ドイツでは公的医療保険の対象になっています

太陽生命 クアオルト®健康ウオーキング アワード2023より

簡単に言うと、普段のウオーキングよりも「ちょっぴりきつい」と感じる程度の運動をすることで、無理なく持久力をアップしたり、日頃の健康維持や病気の予防に役立てたり、リハビリができたりする方法です。

土壌・海・気候・クナイプ式(水など)の4つの自然の要素を活用し、それぞれの場所に合ったウオーキングコースが設定されています。

クアオルトの特徴


クアオルトの大きな特徴は、①医療との連携、②科学的に裏付けされたデータの活用です。

①医療との連携

本場ドイツでは、クアオルト(療養地)での滞在・ウオーキングには医療保険が適用されます。日本では、現在医療保険の適用はありませんが、市民の健康づくりのプログラムとして取り組む自治体も増えてきました。病院とクアオルトが連携し、担当医師のすすめでウオーキングに参加するよう促している自治体もあります。

また、クアオルトでは、参加当日に「健康チェックシート」を記入し、体調確認を行います。持病がある方は、事前に担当医師や看護師さん、保健師さんなどと相談し、どれくらいの負荷までなら問題なく歩けるかをすり合わせます。

そのうえで専門知識を学んだガイドや、医療従事者のサポートを受けながら歩くため、自分の体力やその日の状態に合わせて、適切な運動ができるのです。

②科学的に裏付けされたデータの活用

クアオルト健康ウオーキングで歩く際は、下記の2つが大きなポイントとなります。

  1. 目標心拍数を「160-年齢」にする
  2. 体表面を平均2度低くする

1.目標心拍数を「160-年齢」にする

心拍数「160-年齢」は、「ややきつい」と感じる程度の速さなのだそう(運動強度55〜60%と言われています)。普段から運動している方は「180-年齢」、血圧降下剤を服用している方は「160-年齢」から10〜20%減らした速さが目安です。

速すぎるとウオーキングそのものが楽しくなくなってしまいます。しかし、ゆっくりすぎると体を鍛えるにはもの足りないため、「ややきつい」と感じる速さがよいのです。

また、運動強度55〜60%のウオーキングは、脳血流量が上がり、脳が活性化されるという研究も行われています。ちょうどよい負荷をかけて歩けば、体力づくりはもちろん、仕事の能率がアップしたり、認知機能が改善されたりと、脳への良い影響もあるんです。

2.体表面を平均2度低くする

2つめのポイントは、体表面の温度を下げること。体表面の温度が2度下がった状態は、歩いていても汗をかきすぎず、肌が冷たくさらさらした状態です。
「普段よりも少し冷える」くらいの感覚で歩くだけで、持久力アップへの効果が期待できるのだそうです。

クアオルト健康ウオーキングを体験!


講師の大城さんからクアオルトについての簡単な説明を受けながら、各々「健康チェックシート」に自分の体調の様子を記録。平常時の血圧と心拍数、体表温度も測ります


森に出る前には、しっかりと準備体操。ケガをしないよう体を伸ばしておくことが重要です。

準備ができたら、森の中を歩いていきます。
今回は、峰の原高原にそびえる「根子岳(ねこだけ)」の登山ルートを進みました。


数十m進んだところでストップ。その時点での脈拍を測ります。
「160ー自分の年齢」よりも早い脈拍だと、負荷をかけすぎている恐れが…


普段歩きながら脈拍を意識することは少ないので、測るたびに「このくらいがちょうどいい負荷なんだな」「もっと早く歩いた方が健康維持のためにはいいな」など、それぞれ発見が生まれます。

心拍数が目標値よりも低いときには、おしゃべりしながら歩くことが有効です。
おしゃべりをすると酸素をたくさん使うため、歩く+話すことで、心拍数が上がりやすくなります。また、ウオーキングを楽しむためにはおしゃべりはぴったり。


なるべくおしゃべりをしながら…

10分ほど歩くと、峰の原カントリースキー場に到着。ここでは、みんなで腰に手を当てて、大声を出しました。やまびこが返ってくるかをしっかり聞くために「ヤッホー」ではなく、「ヤッホ!」と短く、大きく発声します。


帰り道は、峰の原高原が生まれる前にこの場所にあった「大笹街道(おおささかいどう)」の碑を見ながらウオーキング。昔々、善光寺から上田方面への峠越えに使われていたこの街道では、厳しい冬の寒さから多くの人や馬たちが犠牲になったのだそうです。


おしゃべりをしながら楽しくウオーキングを続け、会場のチチピへと戻ってきました。

それぞれ脈拍・血圧を測り、記録シートに記入します。
疲れすぎない・頑張りすぎない。でも、適度に運動する。皆さん心地よい疲労感があったようです。

クアオルト健康ウオーキングの取り組み事例を学ぶ


実際に体験した後は、クアオルトを取り入れている各自治体の取り組み例を教えていただきました。

自治体名特徴・取り組み例
山形県上山市日本型クアオルトの先進地。温泉を活用した「宿泊型新保健指導」を実施。日本で唯一、ミュンヒェン大学が認定した「気候性地形療法」コースがある。
大分県由布市日本型クアオルトの先進地。温泉とクアオルトをかけ合わせ、まちづくりに力を入れている。
愛知県名古屋市オフィス街や繁華街に囲まれる「久屋大通公園」でコースを制定。都会の中でもクアオルト健康ウオーキングが行えることを示している。
長野県東御市2023年、長野県で唯一クアオルトのコースが認定された。現在協力隊や「わざわざ」の方を中心にガイドを行っている。

大城さんがクアオルトを指導している名古屋市中区では、都市型コースを導入しています。森林に行かなくても、大都市の中で公園や緑がある場所を上手に活用し、クアオルトができるコースを整備したのだそうです。

森がなくても実践できる。自分たちの持つ資源を活用して、ウオーキングを行える。
とても学びの多い事例ばかりでした。

また、長野県内では東御市が2023年にコースに選ばれ、協力隊の方や移住者の方を中心にガイドを育成されたそう。少しずつ、クアオルトの取り組みが広がっていることを実感しました。

>>「②鹿教湯温泉の健康ウオーキングの活動例を学ぶ」へ続く

関連記事

TOP