近年は働き方が多様化し、暮らす場所を幅広く選択できる人が増えてきました。その中で「自然の中で過ごしたい!」「休日はアウトドアを楽しみたい!」と考える人も多いのではないでしょうか?
働き方や暮らし方の選択肢が増える中で、自然の素晴らしさが再認識されているのではないかと私は感じています。
昭和47年に設立され、長い間地域の森を守り続けてきた「一般財団法人 仁礼会」理事長の若林武雄(わかばやしたけお)さんに、森を育てることや次の世代に残していくための大切な考え方についてお話を伺ってきました!
この先何十年、何百年と続く森にしていくために
「僕の考えでは、この森にこれから関わる人たちは”森は綺麗だね、森っていいね”という感覚的なことだけでなく、人に”癒し”を届けられる森ににするために、今後どのようなことを行なっていくべきかを、理論づけて考えていく必要があると思っています。例えば、子どもたちに山のことを教えるときには『山ってこんなところが危険だよ、ここの山の歩き方はこうだよ』と伝えてあげれば、自分で好きなエリアを決めて、自分で歩くことができる。私たちが特別に何かを用意する必要はありません。」
そんなコミュニケーションができれば、大人も子どもも、自然から感じる”癒し”が、山と関わる第一歩になりそうですね!
しかし森から”癒し”を享受し続けるだけでは、持続可能な山づくりとしては足りないかもしれません。
「一度木を伐ってしまうと、再生するまで30年間山を育てないといけない。人の手を入れず自然の森にするのか、植林して人工的に育てるのか、次にどういう森にしたいかによって手の入れ方が変わってきます。後者の場合、余計な草木を刈ったり間伐をしたり手入れをし続ける中で、30年後にその地域に生きるひとたちが、その森とどうかかわりを持っていけば良いか”気付かせる”ような森を作らないと継続していかないのではと思っています。」
継続して山を守るためには、今ある木や森のありかたを自分たちで考え、伝えていくことも必要がありますね。
現代に合った、人と自然との共生とは?
「普段は都会で働いているけれど、山に入ることで得られる癒しによって、自分自身がよりリラックスできることに気がついた、そんな人が増えてきたように思います。さらにコロナ禍においては、都会の人が多いエリアよりも山にいた方が良いと感じる人も多かった。山への見方はどちらかというと”アクティビティ”に変わってきていると思います。それであれば、せっかく100年以上続いている、この仁礼会の森の登山道を整備して歩いてもらいたいなと考えています。歩いている中で、『この山のここは、どうしてこうなんだろう?』となにげない疑問を持ったり、歴史ある森に癒されるのもいいですよね。」
自然に触れて”疑問”を持つことは、山への関わりを深めていくための大切な要素。
今後変わり続ける社会の中で、山や自然の役割も変わるかもしれません。時代に合わせて森を関わることが、これからの森の活用法なのかもしれませんね。
野生動物との関係性を考慮した森づくり
「訪れた人が安全に、なおかつ自然からの癒しも感じられて、野生動物も共存できる環境というのはどんな森だと思いますか?草木を切り、景観をよくすることで、人と動物が互いに見通せるような観光造林にすることはひとつの方法なのかなと私は考えています。最近では熊に関する報道が多くありますね。ばったり会うのは危険だけど、わたしたち人間が山へ入っている時は、音を出して存在を知らせているため、遭遇することはなかなかない。人間の存在をより一層野生動物たちに気づかせるために、見通しの良い景観は大事かなと思います。」
適切な草木の手入れは、動物との共存や観光客の安全を考慮した措置になります。野生動物へのストレスを最小限にして、これからも山歩き、森歩きを楽しみたいですね!
地域を生かしたい!良いものを伝えたい!そのためにできること
「最近、『ちょっと森の中を歩いてみようよ、こんなことを考えてみようよ、思い出作ってみようよ』と子どもたちに声をかけて、自然の中にある材料でものづくりを行ってみています。枝だけではなく、どんぐりだってどんな木の実でもいい。拾ったものを組み合わせて、そのときにしかできない思い出をつくる。森の中のそんな宝物を子どもたちに発見させることも、私たち大人の仕事かなと思うんです。」
仁礼会では、再訪したくなるような体験をつくることが森づくりにつながり、”山の中で何が楽しいか”、”地域にとってどんな価値があるのか”を考えながら、活動をされています。
このように未来を向いた活動が、自然とそれに癒されに来る人たちとをつないでいるのだと感じました。
ぜひ峰の原高原にお越しになった時には、森の中の道を歩いてみてください!
一般財団法人 仁礼会
https://nireikai.com/