森をつくる

2024年9月「森と草原のリトリート」ナビゲーター養成講座を開催しました②

峰の原高原の森林の恵みを活用していくための団体「Forest Field MINENOHARA(フォレストフィールド峰の原:以下FFM)」では、森林の恵みを活用して健康づくりを促進するプログラム「森と草原のリトリート」の提供を予定しています。

9月~10月の4日間にかけて、7月に開催した体験会や、近隣地域で健康づくりに取り組みたい方の中から、「森と草原のリトリート」での案内人:ナビゲーターとして活躍したい方を募集し、ナビゲーター養成講座を開催しています。

本記事では、ナビゲーター養成講座2日目にフォーカスし、どのようなことを学んだのか、そしてこれからどのようなプログラムを提供していくかのアイデアをご紹介します。

「森と草原のリトリート」ナビゲーター養成講座
開催日:9/14(土)~15(日)、10/19(土)~20(日) の4日間
場所:峰の原高原のペンション「時空の杜」
参加者:ナビゲーター希望者17名
講座詳細:https://forest-field.net/forest_field_lab/2024_health_02/

   

ナビゲーター養成講座2日目 (9/15)

◆森林浴のプログラムデザイン

「森林浴のプログラムデザインとその指導法」
講師:河西 恒 氏

(信濃町森林メディカルトレーナー/しなの町Woods-Life Community事務局/精神保健福祉士/産業カウンセラー)

天候を鑑みて、2日目は森林セラピー体験からスタート。
信濃町の森林メディカルトレーナーであり、しなの町Woods-Life Community事務局も務める河西さんに、森林浴のプログラムをご案内する際の”いろは”を教えていただきました。

森林セラピーとは、「科学的な証拠に裏付けされた森林浴」のこと。
森の中をガイドとともに歩き、五感を使いながら、体の不調や疲れに気づいたり、自分が今どんなことを考えているのかと内側に目を向けたりして、自分自身の”現在”と向き合うことができるプログラムです。

近年、個人の健康維持や病気の予防、企業研修の一部としても注目されています。

峰の原高原でも森林浴のプログラムを提供するにあたり、森林セラピーの考え方や、河西さんが普段どのようなことに気を付けてお客様をご案内しているか、体験と講義を通して学びました。

森に出る前に、事前準備のお話から。
歩くコースをしっかりと下見すること、どんな方が来るのかを具体的にイメージすること等が大切です。

河西さんが下見の際に作ったメモを見つつ、実際に森林セラピー体験へ。
歩きながら、数種類の針葉樹を手に取り、その香りを嗅いでみます。

すると、似たような見た目でも少しずつ香りが違うこと人によって好みの香りが違うことに気が付きます。

皆さんの緊張もほぐれてきたら、簡単な準備体操。

歩きながら、特徴のある植物を触ってもらったり、食べてもらったり、水音に耳を澄ませたり…

嗅覚だけではなく、触覚、味覚、聴覚も適度に使いつつ、五感に働きかけます

信濃町で提供しているプログラムでは、さまざまな森林療法を取り入れているため、呼吸法を実践したり(丹田式深呼吸)、水に足をつけたり(水療法)する時間も確保します。

十分に森と触れ合ったら、「森がカウンセリング」の時間。
ひとりひとり好きな場所に寝転んでもらい、15分ほど森に心をゆだねる時間です。

ゆっくり木々を感じる方もいれば、森の中で気持ちよく寝られた方も。
それぞれが、森の癒しの力を実感したようです。

こうして約2時間の森林セラピー体験が終了。
五感を使って自然と触れ合い、自分自身の現在の状態:どんな気持ちだったか、どれくらい疲れているのか、何を美しいと思うか、森林セラピーを通して何を感じたか…と向き合うことで、ただ森を歩くだけとは違った癒しの時間になります。

そして、参加してくださった方が森とまっすぐに向き合えるように準備するのが案内人の役目。
下見をして、何を話すかを決めて、どんな流れでご案内するのか決めておく。

でも、当日はお客様ひとりひとりをしっかり見ることが大切なんです。
そのときそのときの雰囲気、話の流れ、お客様の興味…などにあわせて、相手に寄り添ったご案内をすることが、「いい体験だったな」と思ってもらえるために必要なのですね。

森を信じて、自分を信じる。
案内人の心得を学んだ充実した時間となりました。

   

◆ストレスマネジメントとメンタルヘルス対策

「ストレスマネジメントとメンタルヘルス対策に寄与する森林浴とそのプログラムデザイン」
講師:木村 理砂 氏

(株式会社Momoウェルビーイング 代表取締役/医師/医学博士)

続いては、複数の企業で産業医として務める木村先生の講義。
森林浴がストレスマネジメントやメンタルヘルス対策に役立つことを、さまざまな実証研究の成果をもとにお教えいただきました。

ヒポクラテスの名言
人は自然から遠ざかるほど病気に近づく

にあるように、自然環境に身を置くことが、精神的に良い影響を与えることがわかっています。

自然の中で過ごすことは、人本来の状態に戻るひとつの方法なのです。
今回の講座で体験したクアオルト健康ウオーキングや、森林セラピー体験もそのひとつですね。

また、メンタルヘルス対策の観点から注目されているのが、企業研修です。
私たちは、仕事をする上でさまざまなストレスを感じています。
過剰なストレス状態が続くと、精神的な支障をきたし、病気につながってしまいます。

だからこそ、「過剰なストレス状態=半健康」なときに、自然の中で過ごすきっかけづくりが大切なのです。

例として、長野県小海町で行われている企業向け森林浴プログラム:Re・Design(リデザイン)セラピーについて学びました。

引用:憩うまちこうみHP

首都圏で働く会社員の方に、4泊5日の小海町でのプログラム(ヨガ、森林ウオークなどを実施しながらのワーケーション)に参加してもらい、ご自身の精神状態に関する心理テストに回答してもらいます。

すると、気分の落ち込みや疲労感など、多くの項目で改善が見られたのだそうです。
さらに、プログラム実施から2か月が経過した後も、実施前よりもよい結果が得られました。

引用:憩うまちこうみHP

《プログラムの実験結果をまとめると》
・森で過ごす時間を持つことで、精神健康度や気分状態が改善する。
・幸福度チェックの得点も向上する。
⇒しかも、2ヶ月後も持続する

全国で行われている上記のような実証研究とその背景を知り、そのためのプログラムを提供することで、峰の原高原でも企業の研修や福利厚生として森林浴のプログラムを取り入れてくださる方々が増えていくのではないでしょうか。

     

◆カウンセリング

「カウンセリング技術」
講師:河西 恒 氏、木村 理砂氏

午後はカウンセリング技術について。
今後、峰の原高原で「森と草原のリトリート」を開催する際、来てくださるお客様を想定して取り組みました。

・案内人であるナビゲーターは、お客様にとってどんな存在なのか?
・インストラクターや自然観察ガイドとの違いはなんなのか?
・それらを明確にした上で、お客様にどのように接するのがよいのだろうか?

それぞれ自分の考えを書き出してみます。

また、お客様と接するときに気を付けたいのが「非言語的コミュニケーション」です。
自分の視線、手や体を動かす癖、表情…これらは無意識になってしまいがち。

そこで、3人1組になって、Aさんは話し手、Bさんは聴き手、Cさんはふたりの観察を行いました。
「にこにこ聴いてくれるので話しやすい」「もう少し相槌を積極的に入れた方がよいかも?」など、第三者から客観的に自分の特徴を教えてもらうのです。

また、お客様の話をしっかり聴くことも求められます。
どうすれば、「自分が相手の話を聴いている」ことを、ちゃんと相手に伝えられるのか
それには聴く側の姿勢・態度も重要なのです。

それを実感するために、2人1組になって実験。
Aさんが話し、Bさんはまったく目を合わせない、頷かない、反応しない

⇒Bさんは話を”聞いて”いるけれど、Aさんには伝わりません。
むしろ、Aさんはどんどん悲しい気持ちになり、話したくなくなってしまいます。

今度は、Aさんが話すことは変わらず、Bさんは「Aさんをお客様だと思って」話を聴きます。

⇒すると、ほとんどのチームで話が盛り上がり、時間が過ぎても話が止まりませんでした。
Aさんの話に興味を持って聴いていることが伝わり、話しやすい雰囲気ができていたのです。

どうしたら、相手が話しやすくなるか。
自分にはどんな癖があるのか。
これからお客様を案内するうえで、ひとりひとりが気を付けるべきポイントが明確になったワークでした。


◆さいごに

2日間のまとめとして、下記のテーマを学んだ上で、これからさらに学びを深めたいことや、やってみたいことのアイデアを出し合いました。

《1日目》
・森林浴、森林ウオーキング
・クアオルト健康ウオーキング
・森林医学

《2日目》
・森林浴のプログラムデザイン
・ストレスマネジメントとメンタルヘルス対策
・カウンセリング

今回出てきたたくさんのアイデアの中から、参加者の皆さんと一緒に「森と草原のリトリート」のプログラムを考えていきたいと思っています。

プログラムが形になるまでは、地域の皆さまのご理解・ご協力も欠かせないですし、人材育成や環境を整える時間もかかることでしょう。

ですが、峰の原高原の豊かな自然環境の中で、健康づくりのための活動をしていくことが、ナビゲーター自身にとっても、プログラムに参加してくださる方にとっても、よい効果を生み出すだろうと考えています。
そして、このような取り組みが、これからのストレス社会の中でさらに求められる存在になっていくと信じています。

峰の原高原での自然活動・健康づくりに携わってみたい方
豊かな自然、森や草原、1500mという高地でのプログラムを受けてみたい方
企業や団体での研修プログラムにご興味がある方

ぜひ、一緒に「森と草原のリトリート」を盛り上げていきませんか?
今後、プログラムのモデルツアーや、半日単位での体験会なども開催予定ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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