峰の原高原の森林の恵みを活用していくための団体「Forest Field MINENOHARA(フォレストフィールド峰の原)」では、森林の恵みを活用して健康づくりを促進するプログラム「森と草原のリトリート」の提供を予定しています。
2024年9月~10月の4日間にかけて、7月に開催した体験会や、近隣地域で健康づくりに取り組みたい方の中から、「森と草原のリトリート」での案内人:ナビゲーターとして活躍したい方を募集し、ナビゲーター養成講座を開催しました。
本記事では、ナビゲーター養成講座4日目の様子をお伝えします。
「森と草原のリトリート」ナビゲーター養成講座
開催日:9/14(土)~15(日)、10/19(土)~20(日) の4日間
場所:峰の原高原のペンション「時空の杜」
参加者:ナビゲーター希望者17名
講座詳細:https://forest-field.net/forest_field_lab/2024_health_02/
ナビゲーター養成講座4日目 (10/20)
◆アロマセラピー ~実習~
「峰の原高原の樹木を活かしたアロマセラピー・フィトセラピー」
講師:橋詰 凌氏
(Hippocampus 代表/NARD JAPAN 認定アロマアドバイザー/アロマ空間デザイナー・コーディネーター)
4日目の始まりは、実際に自分たちで植物を採取し、蒸留するアロマセラピー実習です。
今回は3つの異なる種類の蒸留器を用意していただきました。
ガラス製(1L)→モミ
銅製(3L)→アカマツ
ステンレス製(36L)→ドイツトウヒ
ステンレス製の蒸留器は容量が大きく、蒸留に必要な植物の量も多いため、事前に伐採・粉砕していたドイツトウヒを活用。
「峰の原高原の樹木を活かす」というテーマのもと、受講生の皆さんとは針葉樹のモミとアカマツを採取しました。
蒸留をする際は、なるべく先端の枝葉を選びます。
アカマツ
アカマツはフィトンチッド成分(植物から発散される物質。森林浴で癒される要因のひとつ)を含んでおり、精油やアロマウォーターの状態でも森林浴の効果が期待できます。
モミ
モミは副交感神経を優位にしてくれる成分が多く、リラックスにぴったりの植物。
今回使用する1L・3Lの蒸留器では、手で持てるサイズのビニール袋ひとつ分ほどがあれば蒸留が可能です。
アカマツはヤニが多く、ベタベタするので注意
蒸留する際は、植物を細かく切って蒸留器に入れます。
蒸留器の中に、水、蒸留したい植物を入れ、火をつけます。
すると、温められた水が植物を含んだ水蒸気となり、冷却管を通って精油とアロマウォーターに分けられる、という仕組みです。
精油は、10kgの植物から1%も取れないので、とても希少なものだとわかります。
対して、アロマウォーターは入れた水の分だけ採取でき、植物の成分が少ししか含まれていないため、そのまま使用できるメリットがあります。
ガラス製(1L)から採れた精油(茶色の部分)
植物の恵みをわけていただくことのありがたさや、精油がいかに希少なものか、自分たちで蒸留してこそ実感できるもの。
植物の持つ効果を知ってもらうだけではなく、私たちが手にしている精油やアロマウォーターがどのようにできているものか、今後のプログラムでも伝えていきたいと思います。
◆森ヨガ ~講義~
「マインドフルネスと森ヨガ」
講師:綿本 彰 氏
(日本ヨーガ瞑想協会 会長/一般社団法人ワークフルネス 理事)
アロマの後は、森ヨガについて学びます。
講師は、全国でヨガの指導や森ヨガの活動を広めている、日本ヨーガ瞑想協会・会長の綿本さんです。
森ヨガを学ぶ前に、まずは「ヨガとは一体何なのか?」を振り返ります。
ポーズを取ってストレッチをすること、ではありません。
ヨガとは「ウェルビーイングを目指す実践哲学」のこと。
ウェルビーイングは、身体的・精神的・社会的に良好な状態のことを指します。
そして、ウェルビーイングであるためには、マインドフルネスが大切です。
マインドフルネス
今この瞬間起きていることを一切の決めつけや先入観なくありのままを受け取る心の状態
自分たちが普段生活している中でも、今起きていることをありのまま受け入れる。
それがよい・悪いという判断をせずに、「○○ということが起きているのだな」と認識できている状態を指します。
例えば、雨が降ってしまって外出の予定をキャンセルすることになった場合。
「雨が降って悲しいなあ」
「出かけたかったのに…」
このように考えると、「雨が降った=マイナスのできごと」となってしまい、精神的に良好ではありませんね。
実際は、雨が降っただけ。
「悲しい」「マイナスだ」と思っているのは自分なのです。
このときに「雨が降ったな」とだけ認知できるようになることを「メタ認知」と呼びます。
メタ認知ができるようになると、物事に対して感情的になったり、ストレスを感じたりせず、客観的に状況を理解しやすくなります(=マインドフルネス)。
そのために呼吸に意識を向けることも大切です
そして、マインドフルネスとメタ認知を理解すると、森ヨガの意味が見えてきます。
森ヨガ
森林浴とマインドフルネスとヨガをミックスした心と身体をととのえる移動型アクティビティのこと
森林浴で得られる効果(植物が発しているフィトンチッドを嗅ぐことで癒される等)を活用しながら、マインドフルネスや呼吸法、ヨガのポーズなどを通して、メタ認知を体験してもらう。
そして、自他と向き合い、心身のリフレッシュを測ることができるのです。
「ヨガ=ポーズ・呼吸」だけではなく、体験を通してウェルビーイングを目指すことなのですね。
◆森ヨガ~実習~
「マインドフルネスと森ヨガ」
講師:綿本 彰 氏
森ヨガの基本の考え方を学んだあとは、実際に外に出ての実習です。
辺りは霧が立ち込め、10月中旬にも関わらず0度近い寒さ。
峰の原の幻想的な世界が広がります。
最初は体をほぐすため、いくつかのストレッチを行い、その後2人1組のペアを作ります。
最初のお題は、ペアの方と歩きながら「“心がときめく”と思う場所やものを見て、それをお互いに一緒に見る」こと。
例えば、黄色になった葉が美しいと思ったら、そこで立ち止まり、ペアの方にも一緒に見てもらいます。
自分の“ときめき”と相手の“ときめき”、それぞれ違う“ときめき”があることに目を向けるのです。
しばらく経ったら、見るだけではなく、「具体的にどんなところが素敵だと思うか」をペアの方に説明します。
ペアの方はそれを「私はこう思う」などと意見を言わず、ただ話を聞き、相手の“素敵・ときめき”を受け入れます。
そうやって
森の中に何があるのか
自分はどんなことを素敵だと感じるのか
相手はどんなことを素敵だと感じるのか
を、決めつけや先入観なく、ありのまま受け取るのです。
せわしない日常の中で、改めて立ち止まり、自分が心ときめくものに目を向けることは、実は少ないのではないでしょうか。
そしてそれを言葉にして相手に説明したり、自分とは違う視点の“ときめき”を知ったり…。
そうやって自分の五感と心を開放するのです。
しばらく歩いたら、深呼吸の時間。
大きく息を吸って、吐く。
今いる自然に対し、どんなことを感じているのか、身体のどんなところが疲れている・心地よいのかを感じながら呼吸を続けます。
最後は、水と触れ合う時間。
水温はかなり冷たく、キーンとなるような寒さです。
あえて身体的・精神的にチャレンジする時間を取り、心身をリセットします。
皆さん最初は「冷たい!」と悲鳴を上げながらも、楽しんでいた様子
水から上がったあとは瞑想の時間。
深く息を吸って、まずは自分の内面に意識を向けます。
自分が今感じていること、自然の中でどんな気持ちなのか、呼吸とともにゆっくりと向き合います。
5分ほど経ったら、息を吸うときは自分に、吐くときは周りの人に意識を向けます。
普段お世話になっている人への感謝の気持ちを、吐く息に乗せます。
このように自他と向き合ったら、皆さんの表情もすっきり。
限られた時間なのですが、自分の頭や心が整理され、非常にリラックスした気持ちになれるのです。
今目の前にあるもの、自分や相手が感じていることを、ありのまま受け入れる。
そこに自分の気持ちを押し付けたり、善か悪かの判断をしたりしない。
自然に囲まれて、森ヨガの「マインドフルネス」の素晴らしさを実感しました。
◆アクションプログラムづくり
4日間の講座もいよいよ最後のプログラムへ。
4つの分野に分かれて、今後のアクションプログラムを話し合います。
・森林浴、森林セラピー
・健康ウオーキング
・企業研修
・森づくり、作業療法
4日間で学んだことを踏まえ、峰の原高原で実際にどんなプログラムを提供してみたいかを話し合います。
また、それらを具体的にプログラムに反映するために立ちはだかる課題・改善点と、どのようにすればその課題を解決できるか・何をすればよいか等をまとめました。
森林浴チームでは、歩く以外の体験案も
作業療法との組み合わせでものづくりができたら…
前半2日間で出たアイデアよりも具体的なプログラム案が出たり、課題の解決策が出たりと、皆さんの中で想い描く「こんなことができそう」が、少しずつ見えてきたように思います。
さいごに
4日間の養成講座はここで終了。
最後に、森林サービス産業推進協議会の会長である古川さんから修了証の授与が行われました。
皆さま、大変おつかれさまでした!!!
そして本講座に参加してくださり、最後まで熱心に学んでくださり、本当にありがとうございました。
また、講師の先生方、食事や講座の会場など幅広くご協力いただきました時空の杜さま、受講者の宿泊を引き受けてくださった奥山ペンションさま、本講座に関わってくださったすべての皆さま、改めてありがとうございました。
今後は、まずは興味のある分野(部会)に分かれ、勉強会や先進地の視察などを重ねていきます。
その後、自分たちの得意分野や特性に合わせた案内ができるよう、プログラムづくりをしていきながら、メンバー同士での体験会や身近な友人などへのモニターツアーを開催していく予定です。
11/4に開催した部会のキックオフミーティングの様子
2025年度には「森と草原のリトリート」のプログラムを多くの方にご提供できるよう、健康プロジェクトのメンバー・ナビゲーターの皆さんと一緒に取り組んでいきます。
・モニターツアーにご興味がある方
・「こんなプログラムを作ってほしい」というご希望がある方
・峰の原高原での取り組みに関わってみたい方
より多くの方と一緒に峰の原高原を盛り上げていきたいと思いますので、ぜひお気軽にご連絡ください。